桃色の憂鬱

文を書く練習

さようなら、いままで魚をありがとう。

 おれがこのブログを書き始めたり、様々なSNSでネジの飛んだポエムを垂れ流すようになったり、壊れたラジオみたいに繰り返し同じことを反復するようになったり、そういうおれがイカれたすべての元凶(すべては言い過ぎかも。7割くらい)の好きな人、改め好きだった人の夢を久々に見た。

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 マジでおれの知り合いしか読んでないこのブログって多分、もう書き出しだけでみんな誰のことだか分かってるはずだし、またそいつのことかよ。もういい加減にしてくれよって思ってるんだろうけど、本当にこの辺で最後にするから許してほしい。

 そう、すげー久々に夢見たんだよね。でも今日の夢はいつもと違って、デートしたりとかそういうのではなくて、普通に元カノが付き合い始めたっぽい男と元カノが出てきてなんかおれに?「結婚するけどいい?」みたいなこと聞くからちょっと笑っちゃってさ。「別にいいじゃん。なんでおれに許可取るの?」って返して、そしたら「そっか」つってどっか行ったから、おれはその後ろ姿を眺めながら「じゃあね〜!!!!」つってお別れする夢。

 元カノの夢を見た後っていつも本当に最悪な目覚めなんだけど、今回ばかりはカタルシスっていうのかな。多分ちょっと違うんだけど、でも本当にすごい爽快感があったんだよね。なんてことをしみじみと思ってちたら、ブログ書こうって思って、いまMacBookの前に座ってるわけだけど、いま思えばそいつとの出会いは本気で狂ってた。

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 それは2016年の8月のことでその日も例に漏れずめちゃくちゃ暑かったんだけど、新宿の居酒屋で飲んでたら、おれの友達がインスタ見ながら「彼氏と別れたばっかのけっこう可愛い女の子が新宿で飲める友達募集してるわ」つったから、じゃあ合流するか〜つって、トントン拍子で話が進んだっぽくてそいつと初めて会った。

 第一印象、「いやけっこう可愛いってなんだよ!めちゃくちゃ可愛いじゃん!」って感じで多分おれはすげえキョドってて、でも喋ったらこの前新宿のバリアンで元カレと殴り合いの喧嘩をしただの、「お願いだから別れてください」って駅のホームでその元カレに土下座されただの、パンチの強いエピソードが飛んできて、人は見かけによらないものだなって思った。

 その後、「そういえば私今度、友達と旅行行くんだけど、旅館一緒に探してくれない?」って言うから、ネットで一緒に見てて、「ここいいんじゃね?」つったら、「お、予約で楽天ポイント貯めれるじゃん。カード持ってたらポイントつけてあげるよ」って言うので、カード貸したら「へへっ。使っちゃった」つって、俺がこつこつ貯めてた8000ポイント全部使われてた。本当になんだこいつ。そんときは酔ってたからおれも爆笑してたけど、翌朝冷静になってめちゃくちゃ後悔したよね。

 その日はベロベロになったそいつが「なんか体動かしたいな〜」って言うから、歌舞伎町にあるボロボロのバッティングセンターに行ったんだけど、なんか謎のスイッチが入っちゃったみたいで、突然泣きながらバット振り回し始めて大声で「死ね〜〜!!!!」ってバット持ちながら本気で追いかけてくるからさすがに死を覚悟したのと同時に、「あ、こいつ多分本気で関わっちゃいけない人間だ」って思ったんだよね。全部がキモくてもうめちゃくちゃ覚えてる。

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 その日になんか分かんないけど結構気に入られたみたいで、定期的に遊びに誘われて、割と警戒してたから行ったり行かなかったりして、他にも色んなことがあって2年後の11月に付き合うんだけどさ。

 付き合ってみたら、結構波長が合ったみたいで、出会いとは対照的にずっと穏やかで、「なんかすぐ別れると思ってた」なんてお互いに話しながら、ちょっとずつ思い出が増えていって、徐々にそいつのことが愛おしくなっていて、気づいたらそいつが世界で一番可愛くなってたそんな頃合い、お互いに就職するタイミングで「一緒に住まない?」って言われてまあいっか、つって。同棲も始めちゃったりした。

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 なんか多分、本当の意味で初めて人を好きになれたっつーか、結婚とかよく分かんなかったし、なんとなくおれは一生しないんだろうな、とか思ってたけど、こんな安定した日々が続くなら結婚してもいいかもな。って初めて思ったりして、一緒にいてちょっとずつ自分が変わっていく感覚も、違和感なくそれを受け入れている自分自身も心地よかった。

 でも本当に、マジでめちゃくちゃ好きだったなー。それこそこんな意味わからん気持ち悪いブログ書いちゃうぐらいには。恋人って最後は自分に失恋を与える者だと思っていたから、ずっとなんてないと思いつつもなんとなくずっと一緒にいられそうだなって思った矢先、「別れよう」って。

 彼女の友達と4人で麻雀を打った日の夜にフラれるわけ。もう夜遅いから明日話そうって言って、おれはダブルベッドで、彼女はソファで寝て。次の日おれは初めて仮病を使って会社を休んで、二子玉川歌広場で2時間部屋を借りて色んな話をした。結婚した先にきっとお互いを好きじゃなくなるだろうこと、多分ちょっと気になる人ができたこと、おれが昔ほど彼女のことを大切にしてくれていないように感じること。全部聞いて「あ、もう無理だなコレ」って思ったから別れることにした。

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 多分二十歳過ぎてから初めてめちゃくちゃ泣いたんじゃないかな。元々そんな泣かないのもあるけど、直近泣いたのって全部そいつが理由だった気がする。失恋ってこんな辛いんだ、みたいな。何してても楽しくなくって、何食っても味がしなくって、何かしようにもずっとそいつのことを考えてて何もできなくなるみたいな。そういう感覚。五臓六腑が抜け落ちて表皮だけでなんとか体裁を保ってるみたいな。そんな状態。

 あれだけ生きたいと思えた瞬間があって、あれだけ死にたくなる瞬間もあって、生まれて初めて感じたことがあって、生まれて初めて考えたこともあって。そいつは恋愛を通して初めておれに強烈な感情を与えてくれた人間だった。めちゃくちゃしんどかったけど、それがある人生とない人生だったらある人生で良かったなって思えるくらいに貴重な経験だったと思う。今思えばね。

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 いやーでも長かったな、本当に。こんだけつらつらと書いても微塵もセンチメンタルな感情が湧き上がらなくって、そんなふうにゆっくりと自分が変わっていってたことも、そんな自分に違和感も不快感もないことも全部不思議で、すごく心地いい。

 直近振り返ると、男女問わずおれと一緒にいて楽しいって言ってくれてすげー遊んでくれる友達がいて、「元カノが匂わせてきてうぜーからおれもやり返す!」とかしょうもないこと言っても笑顔で付き合ってくれる優しいやつもいたりして(変なことに付き合わせてごめんね)、なんかおれって周りに恵まれてるなとか、形は違えどみんな愛してくれてるんだなって本当に思う。

 数ヶ月前のおれは本気で「こっから先の恋愛全部妥協で終わった」なんて思ってたけど、そんなことないんだろうなってやっと思えるようになった。きっとどうせそのうちまた誰かを徐々に愛おしくなって、そいつに「今日も世界で一番可愛いね」とか言ってるんだろうな。おれが根っこからちゃんとキモい人間なのはそうだからさ。でも、ようやく元カノに顔向けできる自分になれた気がする。まあ、もう一生会わねーけど。

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 おれはおれで今そばにいる人たちを大切にするし、これからもう一回誰かのことを好きになって、むかしあなたにしたようにちゃんとその人のことを愛するんだと思う。んで、自分で言うのもなんだけど、おれってけっこうイイ奴だからさ、その誰かに愛されながら一緒に幸せになっていくんだと思う。

 だから、君も周りの人と上手くやって、その瞬間好きな人を大切にして大切にされて、幸せに過ごしてくことを陰ながら祈ってるよ。お互いに色々と不器用だけどさ、そのとき抱いた感情を大切にしながら生きていこうぜ。さようなら、いままでありがとう。