桃色の憂鬱

文を書く練習

2020-01-01から1年間の記事一覧

金木犀は仄かに香って

夏がもうまもなく終わろうとしている九月の夜、ひどく蒸し暑く小雨が降る中、クーラーが壊れたから涼ませてよ、とお酒と花火を持ったひなが僕の部屋へとやってきた。 彼女はクーラーの真下に座り扇風機の首振りを自分のところで止めて、持ってきた缶チューハ…

吉祥寺

「あの、よろしくおねがいします」 小さくお辞儀をした彼女が少し緊張していたのを覚えている。大学の後輩で、誰かにくっついて、知らない人ばかりの僕らの飲み会にきてくれた子だった。ちょうど今くらいの花粉が飛び始めたころのことで、当時の僕も今みたい…