桃色の憂鬱

文を書く練習

やっぱりすきだらけでしたみたいな話

 お久しぶりです。今日はその、当初の予定通り、今から今日好きな人と会った話を書きます。突然だけど忘れないうちにさ。書きてーことが山ほどあんの。

 実は実は、好きな人が俺の服を持って帰っちゃってたみたいで返さなきゃつって、ちょー久しぶりに会ったんだけどさ、いやもうほんとに久し振りで。なんだろ、かるく冬と春みたいに二つの季節を飛び越えてクリスマス以来?  みたいなさ、あまりに長い間会ってなくて、思考回路はショート寸前、つー感じで、その間なんどもLINE見返しては当時の思いに浸って、お前タイムリープしてね?  つって、まあタイムリープはしてなくて仕事仕事の毎日だったそうなんだけど、とにかく半年振りくらいの再会、じゃあ俺は今までなにを書いてたんだよ、っつー感じだよね。

  だけど、それでも久し振りに会った好きな人はあまりにも俺の知っていた通りの、まぶしいくらい思っていた通りの好きな人のままで、いつもみたいに少しだけ遅刻してきて、相変わらずそれを白々しく笑って誤魔化そうとしてきた。

  まーその可愛いこと可愛いこと。俺ちょっとなりたくなったもん。その顔と性格に。男なのにさ。男でさえなりたいってことは、普段好きな人の周りにいる女なんてちょっとマジでなりたくて死んだりしてんじゃねーかって、軽く心配になった。

  まあ、そんな感じでね、久し振りに会って、話して楽しかった、知るも知らぬも逢坂の関、ってだけの話なんだけど、それじゃあいくらなんでもじゃんっつー、いや別に良いんだろうけどさ。ブログだし。馬鹿みたいな文量を書く必要なんてさらさらないわけだし、好きな人と会う、なんてブログを再開して以来の事件なんだし、克明に些細に記録しておくべきでしょ、みたいな思いもあって、ただあれだわ、こうやって好きな人のことを書き始めてからわかったけど、俺、こういうルポルタージュみたいなの完全に向いてない。いつもよりフルスロットルで話に脈略がなくなる気がする。それも悪い方へ。

  ほら、今までって自分がただ思ってることをそのまま書いてたわけで、好きな人のことについて書いててもそこには好きな人なんて居なくって、結局ただの感想文だったんだよね。主体が自分の。そういうロマン主義的な慰みに慣れ過ぎて、いきなり今日は写実主義でお願いします、みたいなノリで感じで来られるとさー、どう書き進めんの?  っつー。

  ほんと、前にミヤタのことを書いた時みたいにただ出来事を羅列するだけになる気がするし、なんだろ、へんに気持ちが入っちゃってる分、自分の感じたことと、見た光景のどっちに軸足を定めればいいのかわかんなくって、正直ちょっと混乱するというか、いや、もうめちゃくちゃ楽しかったのはそうなんだけど、そうなんだけどさ。

  たとえば好きな人が泣き崩れて、俺もその涙を拭ってやって、これはオメェには似合わねぇものだよ、とかなんとか言ってね、こう、おでこにキスとかしてさ。思わず好きな人も笑ったり、みたいな。いやこれはキモいよ。大丈夫わかってる。たとえのやつね。これはもののたとえとしてなんだけど、こういうワンハプンでもあれば俺はそこに向けて書くことができるし、けど特に何事もなく、楽しく飲んでってして、じゃあねって終わっただけだと、なにから始めてなにで終わるべきなのかがわかんなくなる。次回はボイスレコーダーでも用意して、それをノーカットで公開したら良い?

  なんだろ、とりあえず今回はダイジェスト版的な、ティザー広告みたいな感じで一部分だけを書いて、続きは出るはずのない書籍版で、っつー感じでお届けしよう思うんだけど、なんか入った店でモッツァレラチーズとお餅の揚げ出しみたいな料理があってさ、好きな人も俺もチーズが好きだからそれを頼んだんだけど、好きな人が料理を取り分けてあげるね、つって、自分のところにはチーズだけを入れて、俺の方に餅しか入れてくれなくて、俺は、おいおいおい〜!  的なことを言って二人でいっぱい笑ったりした。(ちなみにこのおいおいおい〜!  がすごく面白い)  それでその次に、じゃあ俺が今度は入れてあげるね、つって、自分のところにはチーズを入れて、好きな人の取り皿には端に盛られてる大根おろしの塊と餅を入れて、げらげら二人でまた笑ってたんだけど、その隙を突かれて好きな人に取り皿を変えられてさ、そっから解散の時までずっと、俺、笑ってた。

  いやしかも、もうこの流れも二十回くらい過去にしてるもんだから、もはや恒例となりつつあんだけど、その毎回が神回で、俺たちやばくない……?  仲良しが過ぎない……?  って再確認し合って、100点満点中5000京点あげあって、最高だね大成功じゃん、つって今回も。げっ、思い出すだけでもう一回してえ。

  ただ、これだけはあらかじめ言っておきたいんだけど、半年振りにしたこの、おいおいおい〜!  は格別、みたいなのはマジであった。ウイスキーとかワインと同じで、今回のに関しては、別格のおいおいおい〜!  が出てた。年代物はやっぱり香りや味が違う。ほほう、今回のおいおいおい〜!  は半年ものですか、みたいな。

  ま、その場では、おいおいおい〜!  ってちゃんとやったけどさ、それがうちらのルールだかんね、でも本人には言ってないけど今回ばかしはちょっと、本気のおいおいおい〜!  じゃなかった、みたいなとこは正直ある。好きな人が目を細めながら美味しそうにチーズをびょーんって伸ばしながら食べてて、むしろ、みたいな、とこはあった。むしろ、こちら側の方が得をしてしまいました、的な優越感がなかったとは言えない。好きな人がチーズを美味しそうに食べてて、それも、俺には要らない餅を入れてやったよヘッヘッヘみたいな、計画通り、みたいなしたり顔をしてて、俺はその顔がすげー好きだなって思ったから最終的な幸福度では俺が勝ってたぜ、っつーさ。その上、餅も食えたし。

  なんか俺、そうやって飲んでる間ずっと好きな人に、好きだ、付き合おう、もういっそ結婚しよう、てか今からキスしない?  とか言いまくってて、好きな人はそれをロボットかよっつーくらい無視してくれて、俺が講じた策も作戦も全て看破してくれて、その関係性がすげー居心地良くって楽しくて。逆に気付いちゃった。ああもうこれってあれだ、俺ってとっくの昔に好きな人のこと諦めてたんだ、みたいな。だってさ、本当に付き合いたくてドキドキしてた頃は好きとかそんなこと言えないくらい顔真っ赤にしてたんだもん俺。もうさ、未練とか付き合いたいって気持ちって本当に俺の中からなくなっちゃってて、もちろん変わらず好きなままなんだけどさ、自分から出る言葉とは裏腹にどこまでもそれらに意味なんかなくなっていて、ただのコミュニケーションの代替に成り下がって、だけど今のこの関係って俺にとってはすごく楽しいもので。

  そりゃそうだ、こんなのただのハラスメントなんだから。友達という関係と相手の人間性に甘んじて期待して、好き勝手振舞ってんだからそりゃ楽しいに決まってる。自分が太客だと思い込んでるキャバクラの客と同じ精神性だよ。けど、多分これって、相手からするとそんなに居心地の良いものではないはずで、そもそも関係としてはかなり不自然で、それも頭ではとうに分かってて、擦り切れるくらい考え抜いたことで、それでもなんとかかんとかこの不安定な関係が続けられてんのはやっぱり相手のおかげだな、つって、申し訳なさと楽しさで、帰り道、少しだけ、やり直してー今日、と思った。

  なんか好きな人と会う前に時間があったから高校時代の友達とその奥さんに会って喋ってたんだけどさ、その時奥さんに、好き好き言い続けてたらそりゃ好きなままだよねー、みたいなことを言われて、それはほんっとその通りで、好き好き言い続けるのってすげー楽なの。思考停止みたいなもんで。でも相手にも自分にも何らかを強要しないと続けらんない恋なんて、ほんとにほんとにやめるべきだわ、って感じたよさすがに。で、振り出しに戻るわけ。

  理屈はわかったからどうすればやめれんだこれ。マジでさ。なんか途中、好きな人にどんな人がタイプなの?  って訊いて、それで好きな人が、引き際をわきまえてる人、つって、俺、それ聞いて、あー

 もう最高だよこの人、って感じですっげー面白くてげらげら笑ってたんだけど、本当はそうじゃなかったんだよ、俺のとるべき行動って。俺の反応は本当に間違ってる。いや別に相手が本気で言ってないことくらいわかってるし、ひょっとするとマジで言ってたのかもしんないけど、いずれにせよ、空気なんて読まずにマジで心から謝るか、立ち直れないくらい落ち込むかするべきとこだったんだ。好きな人なら。友達なら尚更さ。

  いつまでこんなことしてんだろって身に沁みた。このままだとマジで相手が我慢できなくなって関係が壊れるまで好き好きやっちゃってるよ、みーたーいーなー、ね。いや別に落ち込んでるとか病んでるわけじゃないし、あの、会って話してってしたのは、そんなの全部差し引いても本当に本当に楽しかったのよ。わかんない、相手がどうだったかとかはわかんないけど、たぶんちゃんとめっちゃ楽しんでくれてたと思うし、なにせ5000京点だからね、多少の減点なんて目じゃないくらい楽しかったんだけど、俺はきちんと今の状態が期限と条件が付いた仮釈放中の身分だってことを理解しなきゃなんないし、それは大なり小なり相手の我慢の上で成り立ってるってことを正しく認識しなきゃいけない。

  そういう意味でもやっぱり会えてよかった。前に好きな人について、驚天動地の神通力がある、みたいに書いてさ、やっぱりそれは全然色褪せないままなんだけど、あ、そうだ、話は変わんだけど、俺、すげー好きで敬愛してる人がいて、その人って学生時代にしてたバイトの先輩で、もう結婚もして子供も身ごもってる人なんだけど、別に連絡なんて取らなくたってそれが当たり前だし、けどどれだけ時間を経ても、たとえ共通の話題なんてなくっても、連絡すれば再会さえすればそれまでの時間や環境なんてまるで関係なかったかのように話せる人で、俺、そんなふうになれたらって思うよ。理想形がそれ。で、そのために邪魔なものも余裕でわかる。簡単な引き算だし。俺、義務教育どころか四年制大学も出てんだし。なにより一番重要なのはさ、相手もそれを期待してるはずだったんだ、ってこと。ようやくここまで足掻いて気付いた。つーか直視できた。あのさ、恋ってバーリトゥードじゃ全然ないのね。みんな知ってた?

  いやでもちょっとびっくりするくらい楽しかったな。楽しいだろう楽しいだろうとは思ってたけど、まさかここまでとはね。いまだにご機嫌なままだもん。ミヤタに無理言って飲みに行きたいって言ってよかった。すげー勝手だけど変な意味じゃなくって、ミヤタと色々話もしたし、だけど、それでも、もし結果論が許されんなら猛烈に楽しいまま終われた夜があって良かった。今すぐ全部が変わるってわけにはいかないけど、こんな日があって、それで角度を一度だけでもつけることができれば、将来には大きな差になってるはず、じゃん。

  最後もね最後もね、終電にはずいぶん早い時間に店を出たんだけど、駅のエスカレーターで隙をついて頭を触ってたら、これはなに?  って怒られてそのまま別れてさ、終わり良ければ、でいくと今回のケースはまさに最悪だし、好きな人のハートを射抜くことはついにできなかったわけなんだけど、でもなんかもうこれでいいのかな。少しは整理できるかな。あれ?そういえば今思ったけど、俺、好きな人にあけましておめでとうってちゃんと伝えてない気がする。どっちか忘れた。まあ、別に何回言ってもいいじゃんね、めでたいことなんだし。じゃあ改めて半年越しに、今年もよろしくお願いします、つーことで、ここに俺の万感を込めるよ。