桃色の憂鬱

文を書く練習

銀河鉄道の朝

 

初めて新幹線に乗った日のことを今でも鮮明に覚えている。5歳のぼくにとって新幹線は「夢の超特急」で、本当にどこまでも行けるんだと思っていた。昔JRに勤めていた祖父が記念品をくれて、それからしばらくは新幹線の運転手がぼくの夢だった。

 

誰だって、大きな声で夢について話せた時期があったはずだ。それは、野球選手だったかもしれないし、ある人にとってはアイドルだろうし、ケーキ屋さんだったなんてこともあるかもしれない。ぼく達はまだ子供で、堂々とした夢を見て、そうやって好きなことだけをして生きていけると思っていた。

 

 

現実を知ったのはいつからだろう。

 

 

線路はどこまでも真っ直ぐに続くものではなかった。それは単なる幻想で、現実には容易く走れる線路なんてほとんどなかった。世界はどこまでも理不尽で、ぼく達はそんな世界に背を向けるようにして、夢の切符を破いた。どこかに捨ててきた。

 

生きること、ただそれだけのことが難しい。

他の人が簡単にできることが自分にはできないかった。

 

始発駅も終着駅も、人それぞれ違う。友人とボックス席で話し込む乗客もいれば、ただ一人でひたすら立ち続けている人もいる。電車の速度だけが平等だ。

 

列車は定刻通り駅に着く。扉が開き、閉まる。そしてまた動き出す。単調な繰り返しだと思う。その単調な繰り返しさえあの頃は楽しめたというのに。

 

モノトーンのリズムに揺られながら、ぼく達は本当の幸せの意味を探そうと躍起になっている。

 

同じ毎日の繰り返しの中に、本当の自分を見つけようとしている。何かを築こうとして必死に這いつくばっている。

 

でも、幸せなんて築くものじゃなく、気付くものだ。どれだけ単調な繰り返しだとしても、ただ立って終着駅までじっと待っているだけだとしても、電車は前は前へと進んでいるのだから。時が滞りなく前に進むのと同じように。

 

 

***

 

小学生の頃、初めて『銀河鉄道の夜』を読んで、形はどうあれ近しい人が自分のそばから離れるとき、その人は銀河鉄道に乗るんだと思っていた。小学生の頃にちょっと気になっていた女の子が親の仕事の都合で外国に引っ越したときも。1年前に祖父が他界したときも。そして彼女がぼくに別れを告げて離れるその日も。みんな銀河鉄道に乗って、遠くへ行くんだと思う。それぞれの切符を握り締めて。

 

「何が幸せか分からないです。本当にどんな辛いことでも、それが正しい道を進む中でのできごとなら、峠の上りも下りもみんな本当の幸福に近づく一足ずつですから。」

宮沢賢治-『銀河鉄道の夜

 

銀河鉄道の夜』の本質とは「本当の幸せは何たるか。」だと思う。一体、この世界で何が幸せなのか。本当にどんな辛いことがあっても、それが確かに正しいことなのだとしたら、それは実は幸福への切符を握っていることになるんだ、と宮沢賢治は説く。

 

それはもしかしたら子供の頃に思い描いたような夢の切符ではないかもしれないし、遠回りの線路かもしれないけど、それでも確かに幸せへの切符なのだろう。

 

現実の鉄道は、夢の鉄道よりも厳しい勾配を駆け抜けて行くし、終わりの見えない暗いトンネルの中を駆け抜けることもある。でも、その全てが車窓を豊かにしているのだろう。

 

「さあ、切符をしっかり持っておいで。お前はもう夢の鉄道の中ではなしに本当の世界の火や激しい波の中を大股にまっすぐ歩いて行かなければならない。天の川の中でたった一つの本当のその切符を決してお前はなくしてはいけない。」

 

12月の上旬、クリスマスで色めきだっている最中、ぼくは浮かれた街で肩を落としている。朝の東京は一段と冷え込んでいる。思い返せば、これまでの人生捨ててきたものばかりだった。身勝手故に失ってしまったものはどれだけ願ってももう取り戻せない。今の自分にとって確かなものは、この手をすり抜けていったもの達への後悔と罪悪感だ。

 

でも、雲の切れ間から僅かながら陽の光が差している。たしかにぼくは夢の切符はとうの昔に捨ててしまったし、幸福への切符ももう本当に情けないくらいボロボロだけど、だからこそ、ぼくは幸福とは何たるかを知ることができた。全然綺麗なものじゃないけど、まだ確かにこの右手に幸福への切符は握っている。自分の弱さと罪に向き合うことを忘れなければ、どんなにぐしゃぐしゃでも無くすことはないはずだ。それでいい。

 

後悔や郷愁は腐るほどある。当たり前のことを当たり前に理解し、普通にしていればきっとずっと幸せだったはずだ。かけがえのない幸運をこの手に握っていた。そんな幸運を自らの手で破り捨てた今、かつて思い描いたものより全然酷い状況にあるけど、だからこそ気づけたこともある。前よりも人の優しさや、当たり前の日常の尊さ、本当に大切なものが何かを知っている。

 

なぜ今更、と思う。ずっとずっとサインを出し続けてくれていた君を無視し続けた一日一日の積み重ねが今だというのに。

 

果たして自分の大切な人を心底傷つけてようやく気づくことだったのかとも思う。今ぐらいの想いと熱量で君との生活を大切にしたかったと思う。でも、車窓に映る冴えないぼくはその全てをできなかった。あまりに幼すぎた。全ては必然だ。酷く傷つけた君に対して本当に申し訳ないと思う。もっと早く弱さを自覚し、君に向き合っていたらと思う。もっと君との日々を大切にすべきだった。もっと君の話をよく聞いて、君の感情に共感したかった。君に「可愛い」「好き」と分かる形で伝えるべきだった。本当に申し訳ない。

 

きっとこれから先辛いことばかりだろう。当たり前のように隣にいた君はもういないし、こんなことは考えたくないけど、もう二度と君の側にはいられないのかもしれない。でも、今を見つめてきちんと自分の罪と向き合った先で、また面と向かって君と向き合えるんだろう。形はどうあれ、君との新たな関係性はその先にあるんだろうと思う。こんな状況にあってそんな風に思わせてくれる君の人柄、優しさ、その全てに今は本当に感謝している。

 

だから、どんなに辛いことであっても、これからぼくが直面する経験と感情は全て幸福への途中駅なんだ。たとえそれが今のぼくが望む形ではないとしても受け入れる覚悟を持とう。

 

何があっても今列車から降りてはいけない。苦痛から逃れようとしてはいけない。劇的な変化に、希望的な観測に、「待つ」と言ってくれた君の優しさに、縋ってはいけない。甘えてはいけない。

 

ひたすら切符を握りしめて乗り続けるんだ。今日の自分の心持ちと行動だけが、明日のぼく達を保証しているのだと、自覚して、忘れずにひたむきに生きていこう。

 

そしたらきっとサザンクロスで、また君に会うことができるんだろう。朝日の昇る場所、サザンクロスで。

 

 

何となく、長い汽笛が聞こえた気がした。

 

 

さよなら。またいつか。

 

 

金木犀は仄かに香って

 夏がもうまもなく終わろうとしている九月の夜、ひどく蒸し暑く小雨が降る中、クーラーが壊れたから涼ませてよ、とお酒と花火を持ったひなが僕の部屋へとやってきた。

 彼女はクーラーの真下に座り扇風機の首振りを自分のところで止めて、持ってきた缶チューハイを開けながら「生ーき返るー」と気持ち良さそうに目を細めた。缶チューハイを貰って呆れながら彼女の近くに座ると、彼女は他愛のない話を延々と話し始めて、それはしばらくすると彼氏の愚痴に変わって、最近職場の女と仲良さそうに連絡をとってるだの、ご飯を作っても美味しいと言ってくれなくなっただの、しかも食べ終わった自分の食器すら持ってきてくれないだのと、ほんの些細な悪口をひとしきり並べる彼女に対して、僕はいつものように適当に頷いたり、笑ったり、「そんな話を振った男に話すかよふつー」なんて毒づいて茶化したりした。

 彼女の汗がすっかりひいて彼氏への愚痴も一通り言い終えた頃、でもね、と今まで並べ立てた悪口のひとつひとつに対して、丁寧に彼氏は私と違って社会人で忙しいからと彼女なりの理解を自分と僕に言い聞かせるように付け加えた。

 ほんと、そんな話を振った男に話すかよふつー。

 僕が同じサークルのひなたのことを好きになったのは去年の秋だった。サークルの集まりが終わったあと、たまたま帰りが一緒になったひなと今から紅葉でも観に行こっかという話になって、京都駅から出ていた嵐山行きのバスにそのまま二人で飛び乗った。

 彼女はその間、嵐山の紅葉スポットをスマホで真剣な顔で調べながら、ふと顔を上げてはバスの外を流れる色付いた木を見つけて、ほら見て見て紅葉、と嬉しそうに教えてくれて、僕がどうせ今からいっぱい見れるじゃんと笑うと、不服そうな顔でまたスマホに顔を戻して、そんなことを繰り返す彼女がなんだかおかしくって、僕はまた笑って、なにがおかしいの、と彼女は肩をぶつけてくる。

 バスを降りて少し歩いた先にある渡月橋を渡ると、辺りはうんざりしちゃうほどの赤と黄と緑に包まれていて、その下をたくさんの人たちが嬉しそうに歩いていた。紅葉スポットを調べていたはずの彼女は、そんなことはとっくに忘れている様子でスマホを鞄の中に仕舞い込んでいて、どうやらこのまま人混みの流れに身を任せることに決めたようだった。

 途中、品の良さそうな喫茶店を見つけて、テラス席のベンチに隣り合って座り、二人で熱いコーヒーを飲んだ。コーヒーの湯気が彼女の白い肌と真っ黒でまっすぐに切りそろえられた前髪にかかり、そして消えるのを見ながら、僕は「あまり紅葉とかは見えないけどここ落ち着くね」と言って、彼女はうんうんと頷きながら「あれ、少し金木犀の香りがする」と言い、あっあそこほらっ、と近くの大きな木を指差した。そこには終わりかけの小さないくつもの花が控えめに咲いていて、言われるまで気付かなかったけど、たしかに風が吹くとゆったりと金木犀が香ってきた。

 

「ひなって金木犀とかそんなの知ってるんだ」

 そんなのみんな知ってるもんじゃないの?なになにどした?

 彼女は僕が言ったことに不思議そうに笑いながらコーヒーを飲み干して、僕も遅れてそれに続いた。冷えていた身体はすっかり温まって、それは僕の隣にいる彼女から伝わるぬくもりの中にも感じられて、なんだか僕の中に確かなものとして彼女が存在しているような気にもなった。

 二人で人混みの中に戻ってまたしばらく歩いていると、だんだんと色付いた木々も少なくなっていって、最後には嵐山らしさにうまく溶け込んでいるような店が何軒も並んでいる通りに辿り着いた。そんな店を一軒一軒ゆっくりと眺めながら歩いている時にふと思い付いて、僕は彼女を誘って練り香水を置いている店へと入った。

 えーキャラじゃないし香水とか似合わないし良いよ、とか言いながら珍しく照れてる様子の彼女をいいからいいからとなんとかなだめて、結局、彼女さんにほんとピッタリの香りだと思いますよ、という世話好きそうなおばちゃん店員の後押しが決め手となって、じゃあ使ってみる、と恥ずかしそうにする彼女に一つの練り香水をプレゼントした。

 その日を境に彼女と過ごす時間はどんどんと増えていって、同時に金木犀の香りをふわりとまとった彼女に僕は惹かれていった。いつしか二人であの日に見た紅葉や隣り合って飲んだコーヒーといったものを思い出そうとしても、風景が風景であることを諦めたように僕の顔を見ながら笑っている彼女の顔と微かな金木犀の香りしか思い出せなくなっていった。

 それからしばらくして、冬が秋を追い越した頃、僕はひなに告白して、そして呆気なく振られた。

「あーごめん、私、彼氏居るんだ。言ってなかったっけ?」と申し訳なさそうに言う彼女に、そんなの聞いてないよと思わず笑っちゃって、彼女らしい振り文句のせいで僕はひなのことを余計に好きになった。彼女も彼女で僕のことを振った後も二人の関係が変わらなかったからか、僕に対する妙な信頼感みたいなものが芽生えたようだった。

 僕たちはそれから、以前よりずっとずっと親密になったし、たくさんの話をするようになって、遊んだり飲んだりした夜、たまに彼女がそのまま僕の家に泊まっていくこともあった。ただ、僕が告白をした日以来、彼女から金木犀の香りはしなくなった。ある日それとなく理由を訊いてみると、振られた時と同じようにあっけからんと、だってもう金木犀の季節じゃないじゃん、と彼女は笑った。

 ねえ、ちゃんと聞いてる?雨で服が濡れてて寒いからなんか上から羽織れる服貸してってー。

 自分の家みたいにくつろいでる彼女に心底呆れながらシャツを投げてやると、彼女はそれを羽織りながら、わ、ボタン反対についてるー!とかはしゃぎながら、ねねっ、自分のさ、男物の服を女の子が着てるとそそる?えろい?えろい?と、僕をからかいながら笑い転げてて、僕は、ひなってほんと色気ないよなとか言いながら近くのクッションを投げて、彼女は昔好きだったくせによーと、余った袖を振り回しながらふくれっ面で僕の肩あたりを叩いてきた。

 そうやってしばらくじゃれ合ってると隣の部屋から壁をドンッと叩かれて、僕らは必死に笑いを堪えながらしーっ、しーと言い合って、それが何だかおもしろくって彼女はまた笑いそうになって、その度に僕はドンッと口で壁を叩かれる音を真似して、そんなことを最終的に彼女がお願いだからやめてと笑いながら涙を流し始めるまで続けた。

 あ、雨止んでるよ。私花火持ってきたから、ちょうど良いしやりに行こっ。

 彼女が窓の外を見ながらそう言ったのは、とっくに0時を過ぎていた頃だった。一日中降り続いていた小雨はいつの間にか止んでいて、僕らは外へ出て花火をすることにした。夜の公園は暗くて蒸し暑くて、だけど吹く風にはいくぶんか秋らしさが含まれるようになっていた。彼女が買ってきた子供用の花火セットには蝋燭がついていなくって、二人で身体を壁にしながらライターで火をつけて、蒸し暑いけど風は気持ちいいねと僕が言って、もうすぐ秋だね、と彼女が言った。たぶん僕と彼女が考えていることは少し違っていて、だけどそんなこと気にならないくらい花火は綺麗で、その光に照らされた彼女の横顔はもっともっと綺麗だった。

 結局僕たちは雨のせいで少し湿気っていた花火を半分残して部屋へと戻った。しばらく一緒にテレビを見て、着替え持ってきてないから帰ると言う彼女を家の前まで送ってあげて、今日はありがと、と彼女は小さく手を振って家の中へ入っていった。

 部屋に戻って彼女と僕とで散らかしたクッションや空き缶なんかを集めていると、それらに引っ付いていたみたいに残っている僕の服を着ていた彼女やその格好のまま無防備に笑っていた姿が思い出される。彼女がむすっとしながら、でも嬉しそうに言った、昔好きだったくせによーという言葉。もしも。もしも、僕がまだ好きなままってことがバレてしまったら、きっともうこうやって会えないんだろうな、なんとなくそう思って、そんなことを考えると鈍い波が僕の肺の中を少しずつ満たしていくように苦しくなって、誤魔化すように彼女が飲み残した缶チューハイをぐっと飲み干した。

 部屋を一通り片付け終えたあと、やり残した花火のことを思い出してベランダで一本の線香花火に火をつけた。一人でした線香花火は驚くくらいの煙をもくもくと立てて、それはあの日飲んだ熱いコーヒーの湯気みたいで、小さな音を立てて燃える線香花火の控えめな灯りは、あの日二人で見た金木犀の花にそっくりで、僕は思わず苦笑する。

 もうすぐ夏が終わる。彼女のことを好きになって二度目の秋がくる。金木犀の香りが似合う季節。僕のあげた金木犀の香りがする練り香水を今年も彼女がつけてくれるのかは分からないし、何だかんだで気遣い屋のひなのことだ。きっと告白されたことを気に揉んで使わないんだろう。それでも良いと思った。

 今年もあの品の良い喫茶店へ二人で行こう。京都駅から出ている嵐山行きのバスにまた二人で飛び乗って、恥ずかしそうにする彼女に何かの香りがする練り香水をプレゼントして、何かを言おうとする彼女を言いくるめて着けてもらって、それからもう一度勘違いして呆気なく振られるのも悪くないかもしれない。そんな楽しくてみじめな妄想をしながらよしっと自分を奮い立たせようとした時、秋らしさを含んだ風が吹いて、線香花火の火が、じっ、と音を立てて落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

登場人物紹介
僕:知らない人
ひなた:知らない人
壁をドンッと殴った隣人:僕

吉祥寺

 

「あの、よろしくおねがいします」

 小さくお辞儀をした彼女が少し緊張していたのを覚えている。大学の後輩で、誰かにくっついて、知らない人ばかりの僕らの飲み会にきてくれた子だった。ちょうど今くらいの花粉が飛び始めたころのことで、当時の僕も今みたいに鼻をずるずるさせていて、こんなにも鮮明に覚えているのはきっとそのせいなのだろう。

 2月の下旬、もうすぐ桜の季節だ、出会いの春、なんてかこつけて失恋したばかりで傷心中の僕のもとに知っている子と知らない子が10人くらい。特に何をするわけでもなく、ただいつもみたいに僕の家に集まって、みんな好き勝手していいからねーなんて仕切る人に、ここの家主は俺だからなんて言って笑って、そんな感じのまあなんの変哲もない日のことだった。

 花見行きたいなー、でもまだ全然咲いてないよな、なんてそんな話をひとりの友達と話しながらちょうど空になった缶ビールを潰して、何気なくスマホを取り出したときにベッドの上に座って飲んでいた別の女友達からいきなり話しかけられた。

 「それ、あんたのスマホ画面割れすぎだって。ちょっとやばくない?ちゃんと直しなよ」

 たしかに僕が持っていたスマホの画面はひどく割れていて、でも使えるからまあいっか、最新機種だから修理とか高そうだし。とか思いながらも、まあでも直すべきだよなってそんな気もしたことを覚えている。それまでそんなことは気にしてなかったけど、言われてみるとまあ、そうかな、みたいな。

「そうなんだけどさ。なんかまたすぐ割っちゃいそうだしさ」

 とりあえず冷蔵庫から新しい缶ビールをとるために立ち上がって、げっもうビールないじゃんとか言って、その辺にあったほろよいを手にとってぼんやりと飲んでいると、はじめに小さくお辞儀をした女の子がそそそっと僕のそばに来て、自分のスマホを見せながら、「私のも、も?かな?割れちゃってる疑いありです」と、元気出してねみたいな感じでにこっとするから、わざわざそんなこと言いに来てくれたの?ありがとうって俺も笑っちゃって、

そしたらその子が実はもう一つあるんですけど、

 「私、ビール苦手で、あの、なかなか減らないんで、そのほろよいと交換してください」と恥ずかしそうに言った。

 一通り笑い転げた後で、どうぞどうぞってお互いの缶を交換して、じゃあ改めて乾杯ねって缶がかちんと鳴ったとき、なぜだかわからないけど僕はその子のことが一発で好きになった。そんなふうな出会いの後で、僕はとても自然に急速にその子の行動や仕草に可愛らしさを感じていったし、彼女のほうもまるで僕になつくように連絡をよこすようになった。

 それから僕は彼女とたびたび出かけるようになって、そんなとき、僕はいつも彼女の右手側にいて、彼女は僕の左手側にいた。左利きの僕と、右利きの彼女とはそうすることで、強く固く結びつくように思っていた。少なくともその頃の僕はそうだと信じていたし、少しも疑うことはなかった。僕は何度も彼女の右手を握ったし、そのたび彼女はその手を握り返してくれた。僕はそれが嬉しくて彼女の顔を覗き込み、するとつられて彼女もつられてこっちを見る。幸せだった。付き合おうとかそんなことは口に出さず、代わりに僕は彼女に「ずっと一緒にいようね」と何度も言って、そのたびに彼女は不思議そうに、うん、と頷いた。

 前の彼女にこっぴどく振られて、恋愛とか付き合うとか信じられなくなっていた僕はこれ以上傷つきたくなかったから、本当は彼女の気持ちに気づいていたけれど、鈍感な振りをし続けて、目を背けて、ただただこのぬるま湯のような関係がもうちょっとだけ続くように、そうやって彼女に甘えながら、時間を引き延ばして引き伸ばして過ごしていた。

 僕と彼女は僕の小さな部屋にいるときも、いつも隣り合わせでベッドを背もたれにして座っていた。足を投げ出して、真ん中には灰皿があって、そしていつもおそろいのマルメンと淡いブルーのジッポ。そこが僕らの定位置だった。僕の左側に彼女、彼女の右側に僕。そうやっていると彼女の顔を直接見ないで済むし、彼女と僕のことを正面から考えることを先延ばしにしていられる気がした。

 彼女は何度か僕に手料理を振る舞ってくれた。パスタが好きな僕の要望に応えようと一生懸命食材を選び、そこにひとひねりの彼女らしさを織り交ぜて、僕が好きなにんにくの効いたスパゲッティを作ってくれた。彼女の手はそんなときいつもにんにくの匂いがして、彼女の髪は暖かな匂いがした。それは大人の女の香りとは違ったし、かと言って小さな女の子の匂いでもなかった。そうすると彼女は決まって「おひさまだよ。おひさま」なんて言って笑っていた。僕は彼女の髪の匂いも、にんにくの匂いがする少し湿った手も本当に大好きだった。

 大きな皿にパスタを盛り、テーブルの上においてくれる。僕が先に一口ほおばり、彼女はキッチンで「どう?」と言う。僕は彼女のそばまで行って、そして耳元で、やや元気よく、すっごくおいしい、と言った。

 「やったー!」

 両の手でピースして、そのピースをぐにぐにと曲げながら僕らは笑いあった。そしてまた隣り合わせて座ってフォークを握り、元気よく同じタイミングでお皿へとフォークを伸ばした。

 僕の左手と彼女の右手は何度もぶつかる。

 「あっ逆に座ったほうがよかったね。手が」彼女はそう言った。

 うーん、このままでいいや。

 もう少し。もう少しだけこうしてたい。結局僕がその時何を考えているかなんて彼女はよくわかってなかっただろうし、僕も彼女が大切にしていることをわかってなかったのかもしれない。

その頃のことをどう思い返しても、どんな場面を切り取ってみても、彼女はいつも笑っていて、器から溢れてしまいそうな温かな冬の日の張り湯みたいな、こぼれてしまいそうな笑顔しか浮かんでこない。

 僕は絶対とかずっとみたいな言葉をよく使った。そんなものありえないってことくらいもちろん僕も知っていたし、だからこそこんなあいまいな関係には相応しいと思った。バランスをとっていた。あるいは、せめて強い言葉で自分を慰めたかっただけなのかもしれない。僕は普段から使う言葉で彼女と接することができなかった。

 僕らはいつでも隣り合わせだった。しっかりと手を繋ぎ、僕は自分の手に汗を感じ、そして彼女の手にもそれを感じた。僕たちは同じ景色を見ていた。しっかりと、離さないように握った彼女の手から感じる温度を頼りに僕は歩き続けていた。

 僕は彼女の手を握ることに夢中だったから、一緒に見ていたはずの同じ景色に、僕たち自身は映らなかった。僕は鏡に映った自分と彼女を、自分自身と彼女自身であると思い込んでいたのかもしれない。鏡の中の僕は少しいびつな冷静さで彼女を守ろうとしていたし、鏡の中の彼女は照れながらそれを受け入れていたように思っていた。

 腕の中に彼女を抱きしめたときでさえ、僕は彼女を見ていなかった。僕の胸の中でこぼした彼女の涙に気づかないまま、つないだ手のひらと手のひらをとても幸せに、抱いた小さな両の肩をひどく愛おしく感じた。とても悲しいことだけど、身体を重ねることはきっと彼女の意識にとっては何よりも冷たくて、彼女の意識の外にある身体にとっては熱すぎる他人の自分勝手な欲望そのものだったのかもしれない。

 あの夜も、僕が強く抱きしめていた夜でさえも、彼女は独りぼっちだった。そして、彼女はそのことに疲れきってしまっていた。いろいろなことに、酷く。たくさんのことに、深く。一番そばにいたはずの僕は彼女のことを守れなかった。それどころか気付こうとすらしなかった。僕はただただ彼女のことを欲していた。欲しがるばかりだった。

「もう、会えません」

  送っていった吉祥寺の駅で、僕が聞いたその声はいつもと同じ少し鼻にかかった幼い声だった。彼女はいつもと同じちいさなえくぼを見せていたけれど、きっとそれは精一杯の笑顔で、大きな瞳には涙をいっぱいに溜めていた。そこには初めて僕が、自分のことばかりを考えている僕が映っていた。

「あなたがどうしたいのかわからないです」

  春の花は強く咲きこぼれ、雨を待たずして散ってしまっていた。その花の淡い花芯は静かにひっそりと流れていき、目の前から消えてなくなってしまった。最後に見た笑顔が、悲しいはずの散り際の花が、一番綺麗だった。そんなこと言わないで、ほら、ずっと、さ。

 「こんな関係なら、ずっとなんか続かないです」

 彼女は、本当に真正面から僕の言葉を受け止めてくれていて、だけど僕が彼女にかけた言葉たちはそうやって受け止めるには重すぎて、ぼろぼろになった手と心で、それでも最後まで彼女は待ってくれていた。どうして、どうして、ならずっと笑顔でいたのさ。あんな言葉を真に受けるほうがおかしいよ。本当にずっとってあると思ってるの?僕はもう、彼女を傷つけることでしか、自分を確かめ、慰めることができなくなっていた。

 「私はずっとってちゃんとあると思ってるよ」

 それでも彼女は、これだけ傷つけられてもなお純粋なままで。優しくて。強くて。だから、もうきっと会えないけど、きっと幸せになっていくことだけは確かで、そんな幼くて可愛い彼女が綺麗になってしまうのがあまりに切ないから、だから。彼女のいうとおり、お別れにしよう。それっきりにしよう。

 「最後にキスだけしてくれませんか」

 笑いながらそう言った彼女の手をやっぱり僕は離すことができなかったけれど、それでも初めて僕は彼女のことを正面から見れた気がした。もう何もかも遅いけれど、初めて正面から見る彼女の顔は思い出の中の、僕だけの想像の中にいた横顔じゃなくて、それでも想像していたよりずっとずっと美しかった。

 「実はこれ、ファーストキスですから」

 唇を離した後に彼女が小さな声で言ったその言葉の本当の意味を僕が確かめるすべはもうない。僕たちの手は確かに離れ離れになって、彼女はもう僕がどれだけ手を伸ばしても届かないところへと行ってしまった。

 綺麗になっていく彼女のことを、幸せになっていく彼女のことを、二度と聞くことのできないあの笑い声を、大きな瞳を、くっきり浮かぶちいさなえくぼを、いつも綻んでいた可憐な唇を、まっしろで今にも折れてしまいそうな肩を、彼女を、本当の気持ちを、僕は知ることなんて一度もなかった。僕は何も見ていなかった。

 難しいことなんて何一つなかったのだ。信じてあげればよかった。ただ、正面から抱きしめて、そして一緒に歩いていけばよかった。幸せにしてあげたかった。できれば僕の手でそうなってほしかった。

 雨の降る夜、吉祥寺の商店街にはあの時と同じようにぽつりぽつりと明かりが点きだして、隣の八百屋に張り合うように野菜ばかりが並ぶスーパーの前を、ペットボトルばかりがうんざりするほど並ぶもう一つのスーパーの前を、ひどくピザを薄く焼くレストランの前を、水みたいなカレーを出す洋食屋の前を、ビールやワインを買った酒屋の前を、友達と同じ名前の靴屋の前を、強く走った。息が詰まるほど、声にならないほど、涙を流しながら僕は走った。他にはそうするしかなかった。 

 吉祥寺の町の隅々が、いちいちが、僕に何かを思い出させて、僕はその都度女々しく胸を痛めた。それでも、もう、僕にはそうするしか思い付けなかった。彼女と初めて出会った僕の部屋、彼女が割れたスマホを見せてきて笑いかけてくれたあの部屋、いつも隣り合わせで座った僕たちの定位置へ、今すぐにでも戻らなければならないような気がした。それ以外にはもう、辻褄を合わせる方法がなかった。

十二月

新しい恋には新しい恋人がいて、その年の冬に僕がほんの数日だけした勘違いにも、その勘違いと同じくらい甘酸っぱくて眩しい人がいた。

 

クリスマスにほど近い十二月の金曜日、デートクラブで手慰みに買った女の子は僕が指定した通りの制服を着て現れて、ウリなんてしそうもない純粋そうな顔で「美玖だよ。女子高生。」と名乗り、笑いながら「っていう設定。」と付け足した。

 

寒いからどっか入ろうよーという美玖に「お酒でも飲もっか」と提案して、僕が普段友人と飲むより3つほどグレードの高い店へと入った。席についてもきょろきょろしてる美玖は意外そうに僕のことをじっと見つめ「お兄さん、実は結構遊んでる?」と一言だけ訝しげに僕に尋ねてきた。

 

「実はって、モテなそうな雰囲気なのにってこと?」と僕は彼女の正直な反応に苦笑しながら聞き返すと、彼女は途中でやってきたウェイターがペニエやらカナッペやらとよくわからない料理の説明をし終えるのを待ってから「そういうわけじゃないけど。」と言った。

 

「だって、高校の制服を指定してくるし。しかもだよ、あたしは制服着てるのにお酒を飲もうだなんてこの人大丈夫かなって思うじゃん。そのくせこんなお店を知ってるとか、なんかね。」

 

確かに彼女の指摘はごもっともで、制服を着させてきたくせに酒を飲もうと言ってくる相手なんか社会不適合者か、そこまでは行かなくてもとても女慣れしている男ではないだろう。僕は笑いながらこの通り全然遊んできてなんかいないこと、ただ実際に来た女性が想像していた以上に綺麗だったから予定していた安い飲み屋を急遽変更して、来たことのない店に入ったこと、さっきの料理の説明もいまいちよく分からなかったことを素直に白状した。

 

美玖はそれに対してふうんといった様子で、一応保留にしといてあげますとかそんなことを言って、「あたしも料理はよく分からなかったけど、友達にかなっぺっているからそれ、食べてみたい。」と笑って返してくれた。

 

僕たちは丁寧に料理の説明をしてくれた先ほどのウェイターに、二人で選んだカナッペと、適当なワインと彼女の分のミネラルウォーターと、あとはよくわからないので、一番手ごろなコースを二人分注文した。ウェイターが気を利かせて「ではコースのオードブルをカナッペに変更いたしますね」と言ってくれて、僕たちはやったねとお互いに目くばせし合って、なんとなく二人だけの特別なコースが食べられるような高揚感の中で、彼女が運ばれてきたカナッペを写真を友達のかなっぺに送信した頃にはすっかりと打ち解けあえていた。

 

一口食べるごとにむふうんと漏らしながらとても上機嫌そうな彼女は、だけど急に思い出したように恭しい表情を作り直して、とても美味しいですね、なんて言って、僕はそれで笑って、そうですね、と返して、彼女もこらえきれなくなったみたいにつられて笑って、そんなふうに時間があっという間に過ぎて、ヴィアンドが終わってデザートを食べている時、彼女が「さっき言ってた安い飲み屋さんってこの近く?このあと行きたい」と突然言った。僕は冗談めかして「それは別料金?」と訊いて、彼女は「サービスに含まれておりますが、いかがいたしますか」と妙にかしこまった言い方でまた破顔する。

 

店を出たあと、彼女はうーさむーと言って、ねぇお兄さんってほんとは制服に興味とかないんでしょ?もういいよね?お酒飲みたいからちょっと服買ってくる、と近くの服屋さんへとあっという間に入っていき、関係ないアクセサリーを手に取ってこれの色合いが可愛いとか似たようなのを持ってたけどなくしちゃったとか色々僕に教えてくれながら、そのあと何着かの服を選んで、結局、試着した中で僕が一番かわいいと言った薄いグレーのシャギーニットを買った。

 

「お待たせしましたっ。どうでしょうか」

「ばっちりです」

 

いつも使う飲み屋さんに二人で入ってから、僕は「ところでどうして僕が別に制服フェチじゃないってわかったの?」と尋ねた。彼女は「だって私の制服姿を見た時になんにもかわいいとか言ってくれなかったし、しかもそれだけじゃなくて、一瞬、なんでこの人は制服を着てるんだろう、みたいな顔してたもん」と言って、普通そんなのあり得ないと僕の肩を不服そうに叩いて、僕は彼女の観察眼に驚きながらも誤解と不満を解消するための思いつく限りの言い訳を並べた。

 

 彼女は運ばれてきたお通しを興味深そうに眺めながらふうんとそれらを聞き流して、「ごろごろもつ煮とビールがオススメだよ」と言う店長に「じゃあごろごろもつ煮とビール!ビールは二つお願いします!」と僕の分のドリンクまで元気よく注文して、それだけで店長と店の常連客たちとついでに僕は一発で彼女のことが好きになったみたいで、それからはみんなが、どうしてこんな男に引っ掛かっちゃったのとか口々に質問して、彼女は「あたしの兄の知り合いだったんですよー」とか適当に話を合わせてくれて、この店はもつ煮だけは美味しいんだよな、なんて言う常連とそれに怒る店長を見てみんなではしゃいで、その隙に美玖は「これにがーい」とビールを僕に押し付けてきた。

 

それを見た常連も悪ノリして自分が飲んでたビールを僕に押し付けて「これにがーい」なんて言って、それでまたみんなで笑って、そんなふうに時間が過ぎていってようやく二人で落ち着いて話せるようになった頃、僕は忘れないうちにと彼女に小さな箱を渡した。「はい、これプレゼント。もうすぐクリスマスだし、今日はすごく楽しかった。ありがとう」彼女は驚いた顔でそれを開け、中に入っていたネックレスを取り出した。

 

「え、これってさっきあたしが見てたネックレスだよ。いつの間に買ったの?」と目をぱちぱちさせながら言う彼女に、僕は「いい?」と尋ねて、彼女は嬉しそうに「お願いします」と言った。後ろにまわってその細い首にネックレスを付けてあげると、さっき買ったシャギーニットの上に、控えめに輝くそれがもうびっくりするくらい似合っていて、僕がそう言うと、彼女はありがとう、すごく、うれしいと一語一語確かめるように言って、自分のスマホのインカメラでそのネックレスを何度も何度も確認しながら、そのまま僕に肩にもたれて写真を撮った。

 

「どうでしょうか」

「ばっちりです」

 

僕たちは笑ってそれからまた色々な話をした。彼女が動くたびに胸元のネックレスがちらちらと輝いて、そんなに高いものじゃなかったけど、その慎ましさがかえって彼女の優しくて少し幼い雰囲気にマッチしているようで、もう一度、ばっちりです、と言った。

 

気がつくと彼女とあらかじめ約束していたデートの終了時刻はとうに過ぎて、あと三十分もすれば終電という時間になってようやく僕らは店を出た。店長はいつもより愛想多めに「またいつでも来てね」と言って、彼女はそれに元気よく「絶対に来ます」とこたえた。

 

今日すっごく楽しかったーと何度も言いながらイルミネーションに彩られた街をちょこちょことした足取りで歩いていた彼女は「あのねあのね、終電までもう少しあるからあっちのイルミネーションの方を通って帰ろ」と僕の腕にまたしがみついてきた。

 

デートだけの約束で買った、おそらく女子高生じゃない彼女。美玖の降りそこねた雪みたいに白い肌と、大きくてくりっとした目と小さな口と耳、それらに最適化されたような薄化粧やまっすぐ肩へと延びた黒髪は、大人と呼ぶにはあまりにも澄んでいて、だけど子供と呼ぶには完成され過ぎていた。そして同時に僕にとってこの数時間は、彼女のことを知るのにはあまりにも短過ぎて、なかったことにしてしまうのには長過ぎるように感じた。

 

「実はこの仕事、今週末でやめるんだ」

 

イルミネーションに囲まれた広場のようなところで、彼女は僕の複雑な思いを完全に汲み尽くしているみたいに唐突に切り出した。

 

「目標のお金もたまったし年が明けたら海外へ留学しようと思って」

 

彼女がどんな表情でそれを話しているのかは分からなかったけど、きっと子供と大人の依羅の真ん中のような表情で嬉しそうに話しているはずで、だから、僕は大人らしく男らしく、おめでとう、とだけ言った。

 

イルミネーションの無邪気さと十二月の無機質な寒さと喧騒の中で、彼女の存在だけがはっきりとしていて、声だけが輪郭を持ったみたいに僕へとまっすぐ届く。

 

「あたし一年経ったら日本に帰ってくるから、そしたらすぐに連絡するから、またカナッペとごろごろもつ煮食べに行こうね」

 

こらえきれなくなって振り向いて見た彼女の横顔はやっぱり、思ったとおり、笑っちゃうくらいに綺麗で、湿っぽさや寂しさなんて少しもないかのように楽しげだった。僕は彼女を給料の何十分の一の値段で買って、彼女はそのお金で何百分の一か夢に近付いて、そうやって交差したほんの数時間の出会いで僕は少しだけ勘違いをした。

 

彼女ともう一度会える日のことを今はうまく想像できないけれど、もう一度会えた時の彼女の顔はきっと少し大人びていて日焼けなんかもしているはずで、一緒に食べるカナッペとごろごろもつ煮は変わることなく相変わらず美味しいままのはずで、ひとまずは悪くない、と思う。

 

  「それは別料金?」と僕が訊くと、彼女はけらけらと笑いながら「サービスに含まれておりますが、いかがいたしますか」と答えた。

 

「またね」

  うん、またね。

「絶対に連絡するから忘れないでね」

  もちろん。じゃあね。

「また一年後に」

 

胸元にあるネックレスはイルミネーションの光を反射させながら、いつまでもいつまでも光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日も指名した。

賢者タイムの哲学

香を嗅ぎ得るのは香を焚き出した瞬間に限る如く、酒を味わうのは酒を飲み始めた刹那に有る如く、恋の衝動にもこういう際どい一点が時間の上に存在しているとしか思われないのです。(夏目漱石

 

賢者タイムにおいても上の名言のような、知性の一点が存在しているわけで、そんな点が紡いだ性的な話をコラムにしてまとめてみました。(シンプルにさっきシコっただけ)

 

目次

 

NTRパラドックス

みんなわかってると思いますけど、NTRとは寝取られのことを指します。では、寝取られとは「寝取る側」と「寝取られる側」が存在して初めて成立します。で、AVに関していえばどちらの目線に立っているか、によってジャンルの区分が生じています。(寝取る側視点であれば、浮気/不倫というジャンルに属し、寝取られる側視点であればNTR作品ということになります。)

 

いずれにせよ、NTRとは以下の構図で示すことができます。

f:id:hommes:20191221013458p:plain

 

NTRの大きな特徴として、寝取られる側の気持ちが一方通行になりがちであるということが挙げられます。元々双方向的な付き合いをしていた仲から対象者への気持ちが薄れていき、最終的に一方向性を示すものが王道です。つまり、NTRはキャラクターのリレーションの構造によってジャンルが定義されると言えます。

 

以上のような三角形のリレーショナル構造がNTRと定義される他に、しばしば我々の間でNTRの対極にある概念として「純愛」が用いられます。ここではモデルを簡略化させるため、オスとメス*1の間に相互の関係性があれば純愛と見なすこととします。

 

つまり、文学的な純愛のみを対象としているのではなく、快楽墜ちや相互依存といった受け側の恋愛感情の有無を問わず、依存や堕落であっても「拒絶から受容」へと関係性が変化したものを便宜上「純愛」と定義して、話を進めていきます。

 

この場合、オスのリクエストに対するメスのレスポンスが失われている状態をNTRと呼び、オスメス双方のリクエストがレスポンスを兼ねて、相互作用している状態を純愛と呼べることがわかります。以下の図です。

f:id:hommes:20191221015142p:plain

 

※厳密な定義としては先ほどのNTRの図が正しいです。上記の部分のみであると、「ただの片思いの関係」も内包してしまいます。しかし、純愛と比較するために簡略化しました。

 

上記の図が示すように、定義される純愛はNTRの対義語として用いられている感覚を容易に理解できたと思います。しかし、この論理構造に着目し改めて、NTRの図を見ていただくと頭の良い皆さんはあることがわかると思います。

f:id:hommes:20191221013458p:plain

 

先ほども登場したこちらの図ですが、NTRのリレーション構造をさらに細分化すると対象者と寝取る側の間に「純愛」の構造が存在していることがわかります。

f:id:hommes:20191221020522p:plain

以上のようにNTRは「純愛」と「観測」によって構成されていることがわかります。つまり、NTRと純愛は対義語(NTR=¯ 純愛)ではなく、NTRは純愛を含む(純愛∈NTR)といえることがわかります。

 

NTRの作品によっては、観測者であるはずの寝取られる側が最後まで気づかないものもあります。その場合の観測者は視聴者(読者)です。したがって、NTRとは本質的に純愛であり、それを類別するのは観測者がいるかいないかの一点に尽きるということがわかります。

 

それは観測者効果のようなもので、現実とは完全に隔離された空間でオスとメスが盛っているとしたとき、その状態は純愛ですが、それを見ようとした瞬間にNTRになる可能性を内包しているといえます。つまり、すべての純愛はNTRと重ね合わせの状態にあります。

 

私がこれに気づいたのはNTR作品を漁っているときでした。詳細については伏せますが、僕がある作品を見つけたとき以下のような失望を抱きました。

 

「これ寝取られって自称してるけど、ただの片思いが失恋しただけやん」



そしてこの後他の作品で抜いた後の賢者タイムで気づきました。「NTRとは観測者の中に存在している幻想である」と。

 

つまるところ、僕がその作品に抱いた失望の本質は以下です。「その作中の主人公(観測者)は、そのオスとメスの交配をNTRだと解釈した」「読者である私(観測者)は、そのオスとメスの交配を純愛だと解釈した」この認識のズレが感情移入を阻害していました。

 

勃起は論理に働く(いわゆる「筋満ち勃った」ってヤツ)ので、このような認識の齟齬によって簡単に萎えてしまいます。男性諸君は分かるはずです。つーか分かれ。

 

結論としては、NTRは観測者の幻想であり、観測者がメスに抱く感情によって純愛にもNTRにも成りうるということです。つまり、NTRが示すものはメスに抱く観測者の特別な感情の発露であり、観測していたものは雌雄の交配ではなく、自分自身の心なのかもしれないということです。

 

チンポピュリズム

性的嗜好ほど、人間の個体差がピーキーに反映されたものもないでしょう。(ここピーキーという表現も微妙で、要は個体差が尖っているということが言いたい。エアライドのマシンの性能みたいな。こういうのを示す語彙ってないの?あったら教えてほしい)

 

そして個人には固有の「理想的な展開、構図、背景などの要素」を持っており、これらを満たすポルノを探しています。この理想的な何かをここではイデアルフォルムを呼ぶことにします。イデアルフォルム(以下、イデアと呼びます)と完全に合致するポルノを見つけるのは困難で「性癖ドンピシャ」と表現してもその本質は近似なだけです。

 

大抵は近似値の中にイデアの虚像を見出しているだけで「これが自分の理想」と思い込むための媒介としてポルノが用いられるだけです。なぜ理想のポルノが存在しないのか。それはイデアの実像を自分自身ですら捉えきれないことにあります。

 

もし、イデアを正確に知覚することができるのであれば、他者の生み出すコンテンツに依存する必要はなく、自分で生み出せばよいのです。しかしそれが叶わないのは、人間はイデアを知覚することができず、存在する対象物と比較してその距離を測ることしかできないからです。

 

例えば、ある人は貧乳を見て「自分はもう少し大きいほうがいい」と思うことでイデアの断片を捉えます。そして「イデアのおっぱいはもう少し大きいのではないか」という幻想が爆乳絵同人誌を生み出すのです。

 

そして、そのイデアの実像を見出す媒介としてコンテンツは創作され、消費されています。つまり人気のポルノのというのは「多くの人間のイデアと近似である媒介」ということができます。

 

しかし多くの人間のイデアと近似であるためには、そのコンテンツ自体の想像的余地を残さなければならない。つまりそのコンテンツを構成する多くの情報について、ある種の抽象性がなくてはならないわけです。

 

誰かの性的嗜好に完全に合致するものを作ったとすれば、それは対極に性癖を持つ誰かの媒介にはなりえません。つまり、人気のポルノであるため、商業としてのポルノを成立させるためには、より多くの人間の媒介になる余地を残す必要があるので、全体的に抽象性を孕みます。その結果、性のポピュリズムが起きるわけです。

 

全員の媒介になるだけの抽象性を残しているということは、全員が固有に持つそれぞれの尖った性的指向の部分に合致しないことを示します。よってポルノは人気であれば、あるほど、また、人気であることを追求すればするほど特定の誰かが抜けるという一貫性を失います。

 

皆が固有の尖ったイデア保有しているが故に、全員のイデアを満たそうとすれば、そのポルノの方向性はたちまち失ってしまいます。なんとも皮肉な話です。

 

僕らは情報で抜いている

先程、NTRの項目で、ポルノのカテゴライズは一見視覚的な分類に見えて、その本質は観測者の感情次第ということを述べました。しかしこれは色情の全体像ではありません。上記の例は認知の後に来る解釈によってポルノをカテゴライズしています。となれば当然逆の、認知の前に来る先入観がポルノをカテゴライズするケースも存在します。

 

例えば、男女が仲良さそうにベッドの上で情事にふけっているとします。この動画が某rn hubに投稿されていたとして、どのようなタグが登録されていると想像できますか?無難なところで行けば「カップル」「ハメ撮り」などが想像できるでしょう。

 

しかしそれは多角的な世界の一面に過ぎません。

 

僕が見た動画のケースでは、この動画には「NTR」とタグ付けされていました。とはいえ、NTRの三角形で示すような「寝取られる側」が存在するわけではないから、客観的には寝取られであることを証明できません。

 

その逆もまたしかりで、その男女がカップルであることも証明できず、撮影された部屋もベッドも誰のものであるかが動画という制限された情報量下では確定することができません。つまり。その男女の性行為が浮気であることを示すのは、動画のタイトルとつけられたタグのみです。

 

まぁ、僕はその動画で抜いたのですが、実際にはただの男女が仲良くセックスしてるだけです。もしタイトルに、「〜のカップルが〜」などの純愛属性を含んでいれば、私は抜かなかったでしょう。上記の例が示すように、動画の内容よりもタイトルが示すシチュエーションのセットアップのほうが、ポルノにおいて大きな意味を持ちます。

 

人は、前を向けば見える四足歩行のケツに発情していた時代から、ただ裸を見るだけには飽き足らず、その意味を解釈しなければ興奮できないほどに知能が発達しました。

 

コンテンツを作る側は、消費者のイデアルフォルムに向けて情報をセットアップします。それゆえ最近のアダルトコンテンツのタイトルは長いのでしょう。他にも大人にランドセルを着せ、幻想を作ろうとしたりします。そして消費する側も、媒介を自身のイデアに近づけるように解釈をセットアップします。ポルノに意味をもたせるのは、見せる側と見る側の幻想なのです。

 

だからこそ、視覚的なポルノを規制せんとする団体や、規制に精を出す権力を滑稽に思います。彼らの論点は常に「何を見せないか」に始終していますが、本質は形而下には存在しておらず、その物体に抱く幻想にあります。しかし、誰も気づいていません。そしてその結果、対象に規制という幻想を与えています。それが、ポルノを生み出す行為と知らずに。

 

つまり、勃起とは幻想と解釈なのです。

 

*1:性別に意味はなく、受け責めの表記として「オス」「メス」と当てていることを理解していただきたいです。(せめてものLGBTに対する配慮)

男女友情論

なんかさー、よく宇宙人はいるのかとかきのこvsたけのことかそういうのと並んで、「男女間の友情は存在するのか」みたいな話が永遠のテーマっぽく取り上げられるじゃないっすか。僕も何回かやったことあるんすけど、この話マジでもうやめない?だって、議論が紛糾してる理由って単純に話が噛み合ってないからじゃん。もう最後は絶対どっちかが不機嫌になって、思い出はいつの日もー雨ーみたいな感じで終わるじゃん。

 

する派はしない派に対して、こいつら何と戦ってんだろなって思ってるし、しない派はする派に対して、こいつらほんとガキだなー、なんもわかってねー、って思ってるだろうし、お互いがお互いを見下しあってるだけじゃんね。

 

いやね、例えばこれが河童はいるかとかなら分かんのよ。俺この前河童見たんだよマジで。頭に皿乗せたヌルヌルした奴がなんか川でキュウリ洗ってたもん、みたいな、いやいやいやw、それただのやべーおっさんだってw 触れちゃダメなやつだってw つー感じでめっちゃ盛り上がるじゃん。そういう話ならすげー楽しいと思う。河童を見た話なんて最高なんだから、みんな酒飲みたくなるじゃん。

 

今、なんとなく河童のwikipedia見てたら、

肛門が3つある、体臭は生臭い

って書かれてたんだけどさ、これだけで二次会決まるでしょ。これどうやって発覚したんだよー!つってさ。だってさ、普通に生きてて肛門の数とかバレるようなもんじゃなくない?ぜってー付き合ってたじゃん。お前河童の元カノじゃん。うちの元カレ、肛門3つもあってさー、ウケるーのやつじゃん。あいつの皿割ったら超キレっからね。無理すぎてソッコー別れたわーのやつじゃん。みたいな。

 

あーとまんねー。河童の話とまんねー。話がめちゃめちゃ逸れまくってんのは分かってるけど、頭で理解できてんのに全然止まんねー。助けてくれ。まーなんだ。そんな感じでさ。閑話休題っつーことで、話を戻すけどさ。俺は普通に男女の友情はある派じゃん。だから一回ちゃんと男女の友情が成立しない派の意見を見てみたいなと思って、いくつかサイトを回ってみたの。そしたらどうやら大体三つくらいを理由に言ってるみたいなんだよね。

 

俺は心が本当に穏やかだから、その一つ一つに対して、うーん、それはどうなんだろう? と丁寧に優しく気になる点や反論を挙げようと思うんだけど、

 

  • 一方に恋人ができたら疎遠になる
  • いずれに恋愛感情が芽生える
  • 必ず男には下心がある

 

だいたいこんな感じ。あーーーはいはい。なるほどね、こういうカラクリだったってわけね。いつもの恋愛サイコパスデリヘル嬢がはしゃいでたじゃねーか。ぶち殺すぞテメェ。最近見ねーと思ってたらこんなとこに居やがったのか。俺前に言ったよな、そういうのは高校生までにしろって。男とセックスがあらゆる悪の根源なんつー考えは真理でもなんでもなく、ただお前のコンプレックスなんだよ。俺は自分のコンプレックスを振りかざして周りを攻撃してるやつらを絶対に許さねーからな。

 

一方に恋人ができたら疎遠になる

 

どちらかに恋人が出来たら恋人に気を遣ったり、逆に恋人がヤキモチを妬いてしまったりするので、自然と疎遠になって友情は成立しなくなるという話ですね。いや、もう、ならやっぱあるんじゃん友情、つー感じなんだけどさ、たぶん、未来において友情がなくなる可能性がある以上、それは真の友情とは言えないみたいな話なんだろうな。

 

でもそれはもう異性とか関係なくない?だってそんな言い分が通るなら、同性だとしても友達と喧嘩したり、たとえば相手が人を殺して捕まる可能性がある以上、私はそいつを友達と思わない、みたいな話も成り立つわけじゃん。仮に恋人が出来たら疎遠になる→疎遠になれば友達じゃない、が成り立つんだとしても、じゃあ恋人がいない間は普通に友情あるじゃん、っていう。もっとも俺は友情って疎遠になったから消えるようなもんじゃないと思うけど。

 

いずれ恋愛感情が芽生える

 

これも同じなんだけどさ、なんで男女の友情の場合だけ未来の不確定要素を加味した上でその有無を判断しなきゃなんないの? 同性なら、一度会ったら友達で毎日あったら兄弟さ!みたいなノリなのに、異性の話になると急に「近接性」だの「熟知性」だのと心理学の用語を持ち出して、マジになるじゃん。

 

恋愛においては誰しもが専門家である、ってか?まあ、そんな言葉はないんだけどさ。ない言葉を斜体にすることであたかも引用したみたいにしちゃったけど。

 

なんか、もっともらしく恋愛に結び付けて友情を否定するけどさ、それって単に、惚れっぽいか距離感間違えてるだけじゃねーの?男と女なんだからそこには性差があるし、その性差に合った正しい距離感は当然あるよ。けどその距離感は友情を否定するもんじゃないじゃん。普通に男にも見境はあるし。だいたいバイセクシャルの人には友達いねーのかよっつー。

 

でもわかるんだよね。「男女間に友情なんてない」っつーポジショントークしてれば、やんわりとマウントを取れるんだろうし。

 

しかも悲劇のヒロインっぽくさ。男なんて信用できない感を匂わすことでそれなりの経験を言外に示しながら、魅力的な自分を演出するには絶好の機会だと思うよ実際。浅えけど。遠くの方までずっと浅えけどさ。潮干狩りできそうだな。俺、そこでバケツいっぱいのあさりをとって、河童の話のつまみにしたいわ。

 

男は異性に必ず下心を抱いている

 

ちょっと落ち着けって。お前今日やっぱおかしいよ。大丈夫?嫌なことあった?河童のことあんまり好きじゃなかった?普通にそんなことないよ。俺、こういうフロイト的な考えって下品で大っ嫌いなんだけど、百歩譲って無意識下にそういうのがあったとしてもさ、無意識なら自覚的に認識できる友情とは関係ないじゃん。

 

それとも何、裸見ても興奮しないのが友達、っつーガキみたいなことを言ってるわけ?それはバラバラ死体になってるのを見ても気持ち悪くならないのが友達、みたいな暴論と同じだよ。同性との間でさえそんなピュアな友情を育んでないくせに、男には下心があるから男女間に友情はない、なんつーのがまかり通るなら、女には母性本能があるから俺は堀北真希の子供である、っていうのも認めてくれよ。頼むよ。前半部分は正直どっちでも良いから、俺が堀北真希の子供っつー部分だけ認めてくれ。なあ頼むよ。頼むって。

 

つーか結局これって、そんなつもりもない男にベタベタしてたら言い寄られたりセックスしちゃって友情壊れてしまった〜!男女で友情なんてない〜!ってことでしょ、要するにさ。地雷じゃん。グループに一人でも居たら終わるタイプの地雷じゃん。

 

ただ自分か相手のどちらかが理性のないチンパンジーなんじゃない?それなら話のテーマが変わってくるよ。チンパンジーとの間に友情は普通にないんだし。異性間に友情がないんじゃなくて、お前とそのお友達の間に友情がないだけじゃん。人間なら、友達なんかにぼさっと乳首をヒネられてないで、頭をヒネってくれ。

 

いかがだったでしょうか?いかがだったでしょうか、じゃねーよ。最悪だったわ。嫌な先生がする最悪の説教だよ。よくあるまとめサイトの最後みたいにして締めようと思ったけど、薄まんねえくらいの悪だった。でも大丈夫。俺は別に「友情なんてない派」にだけ怒ってるわけじゃないから、そこは安心して欲しい。普通に「友情はあるよ派」にも怒ってる。強火で怒ってる。

 

あのさー、聞いてもないのに、私って男と居る方が楽なんだよねーだの、えー私別に男友達にハグしたり一緒に寝たりって普通にするょ?だって友達なんだょ?みたいなさ、そんな感じのことを言ってる人って周りにもいると思うんだけど。

 

いない派が地雷なら、こっちはもう落雷。向こうから積極的に狙ってくる。最悪、命取られるまである。ほら、セフレとかの話題でもさ、付き合ってなくてもセックスとか別に普通っしょ、ただのスポーツじゃん、みたいな、わざわざ言っちゃうダサさってあるじゃん。自分の考えが特別で人と違うと思ってるからそんなことをわざわざ言っちゃうくせに、なに、え、嘘、これが普通だよね?みたいな顔してんだよ、みたいな恥ずかしい痛さ。

 

必要以上に男女の仲に純粋性を見出そうとしたり、逆に極端にそれを否定したり、あの、悪いけどそんなにこだわるほど特別なものじゃないよ。普通にしてくれよ。バレンタインの時にめちゃくちゃそわそわしてる奴も、こんなの製菓会社の作ったイベントじゃん、はしゃいでる奴なんて全員ガキだろ、と斜に構えてる奴も同じレベルでダサい。それと同じで意識しまくってる感じが必死だなっつー。

 

もうね、男女の友情ってあると思う?なんて訊かれたら、本当は相手の顔をチラッと見ながら、お前となら成立する、って力強く言うべきなんだけど。他のやつなら言い切れないけどお前だけは絶対に成立する、あり得ない、なぜなら恋愛対象としては本当に無理だから、つって。

 

だけどそんなこと言ったらオブラートに包んで荒波、ありのまま言ってしまえばどう考えても津波レベルの災害が起こるわけで、そんなの、風に戸惑う弱気な僕は素直におしゃべりできないじゃないですか。だから毎回「わかんないけどあったら良いなって思う」みたいなことを言って逃げるね。

一流のモテ男のみが実践しているたった1つのこと

目次

はじめに

 初めまして。稚拙と申します。このたび私はAdvent Calenderに参加させていただく運びとなりました。

adventar.org

 企画者のぶんぶんさん。貴重な機会を設けてくださり、誠にありがとうございます。

 さて、これを読んでいる皆さんは無事就職活動を終えて、羽を伸ばして過ごしていらっしゃるかと存じますが、どうせならその時間、女性にモテまくって、より楽しい日々を送りたいですよね?

 そこで、今回私は本当にモテる男が実践していることを皆さんに伝授したいと思います。

「モテたいけど、どうしたらモテるかわからない」「最近恋愛が上手くいってないように感じる」

 そんな方は特に必見です。ぜひ最後まで読んでみてください。今回はなかなか語られることのない「具体的な身に付け方」についても徹底解説していきます。きっと本稿はあなたの恋愛を「劇的」に変えることとなるでしょう。

 

モテる男とモテない男の違いとは

f:id:hommes:20191203033531p:plain

 私はこういう発言を耳にすることがあります。しかし、これは間違っています。

 モテる男になるのに、イケメンである必要は全くありません。 

 考え直してみてください。イケメンじゃないのにモテる男、あなたの周りにたくさんいますよね?また、恋愛に対してそこまで努力しているようには見えないのに、なぜかモテている人。いませんか?

 一方で、どれだけ頑張って女性にアプローチしてもモテない男もいます。

 この差は何なのでしょうか?

 「モテる男になるための努力」というと、皆さんは以下のようなものを思い浮かべるかもしれません。

  • おしゃれな服を買い、身嗜みを整える
  • 女性には優しく接し、気遣いを欠かさない
  • デートに関する情報を仕入れておく
  • 面白い話ができるトーク力を身につける
  • 女の子に好感を持たれるLINE術を勉強する
  • お金を稼ぐ

 確かにどれも大切なことでしょう。しかし、「あること」が欠けていると、残念ながらその努力が身を結ぶことは絶対にないのです。至極当たり前のことなのに、つい見落としがちなポイント。それは、自分自身を磨くことです。

 恋愛におけるテクニックや知識はもちろん必要です。しかし、それらは仕上げのスパイスのようなもの。まずは自分自身を磨き、人間としての魅力を身につけることが不可欠なのです。

  絶対に覚えておいてほしい恋愛の鉄則があります。それは「自分と釣り合う女性としか結ばれない」ということ。

 女性はアプローチしてくる男が「自分と釣り合う」と判断したときに初めて交際をOKしてくれるものです。つまり、一流の女性と恋愛をしたければ、自分が一流の男になるしかないのです。

 

f:id:hommes:20191203040452p:plain

 そうですよね。一流の男やそのための自分磨きと言っても、何を磨く必要があって、何をすべきなのかが分からなければ意味がありません。

 しかし、次項から徹底的に解説していくのでご安心ください!

 

一流の男の条件

 一流の男を思い浮かべてみてください。

  • 一流の経済力
  • 一流の学歴
  • 服装
  • 過去
  • チンコ
  • フェイス
  • 趣味

 様々なものが思い浮かんだことかと思います。今挙がっているどれも要素として正しいです。しかし、それがもし表面だけだったら、すごくガッカリしますよね。

 実際、ベンツに乗っていたから家までついて行ったら公園の青テントだった。なんてことはよくあります。

 真の一流とは本当にすごくシンプルで、咄嗟に出た言動や仕草の中に「ファーストクラス感」が滲み出るのです。つまり、中身が一流でなければ、いつかメッキが剥がれる。中身から一流になるしかないのです。

 

一流になるために必要なたった1つのこと

 あなたはトイレに行くとき油断していませんか?「誰も気にしてないから、トイレだけすればOK」とか思っていませんか?そんなあなたは要注意です!

 横一列に並ぶ小便器の中で、どれを選び、用を足すのか。その選択というのはその男の人生そのものを体現します。

 つまり、一流とそれ以下の分かれ目が「小便器の選択」に現れるのです。

 少し話は逸れますが、近年企業の人事担当者も作りに作られた質疑応答の虚言よりもあえて学生がトイレに行くまで泳がせ、そこでの仕草を見て、採用するか否かの判断を下しています。

 現代の情報社会において、信用に値する人物か、有能な人物かを示すバロメーターは単に学歴や職歴といった客観的な指標だけではなくなりました。

 時代の流れと共に、本人の素が最も出るような挙動に注視する風潮が高まっています。

 当然恋愛においても同じこと。女性も男の小便器選択をよく観察していますし、ここ最近は週刊誌やWebコラムでも頻繁に取り上げられるようになっています。

 つまり、小便器の選択というのが、「自身の今後の人生を分岐する分水嶺になる」と言っても全く過言ではないのです。早速、一流の小便器の選択を解説していきます。

 

《序章:戦士の資質》

 小便器選択の基礎を学ぶ前に、まず自分や相手が資質を備えているのか心得ておく必要があります。トイレする人を本稿では便士と呼びます。しかし、便士の中には戦士たるもの、足り得ないものが存在します。

 それらを分かつものは「本能的な恐怖があるかどうか」小便器選択は本能的警戒心によって成立します。つまり、小便をするときに横に立たれたくないという生物的恐怖を認識して初めて、小便器選択が行われるのです。

 しかしながら、男に生まれているにも関わらず、トイレで横に立たれても何も思わない平和ボケしたド三流がいます。これを本稿では《ベンジャミン》と呼びます。他にもたくさんの便士がいるので、図にしてみました。参照しながら、本稿を読み進めてください。

 

 備考:コマ紹介

 トイレに来た目的やトイレ内での行動によって、便士を分類します。初心者にこれらを考慮して、用を足すのは難しいので、実践を踏まえて体で覚えることをおすすめします。

 

f:id:hommes:20191203050657p:plain

f:id:hommes:20191203053126p:plain

f:id:hommes:20191203053018p:plain

f:id:hommes:20191203054354p:plain

 このようにたくさんいる便士の中で、私たちは自分の領土を守らなければなりません。自分が安心して尿ができるスペースのことを必尿間隔(ひつにょうかんかく)というのですが、この必尿間隔には個人差があり、便器1マス空いていないとできない人もいれば、2マス以上空いていないとできないという警戒心の強い人まで様々います。

 しかし、本稿においては必尿間隔を1マスと定めて話を進めていきます。

f:id:hommes:20191203060858p:plain

緑:自機 青:敵/エネミー

 これが本稿における基本的なルールです。もちろん必尿間隔に関しては、あなたが一番安心して用を足せるスタイルを見つけ出せればいいので、実践において1マスにこだわる必要はないです。

 次項では実際に便器選択のロジックを学び、それを発展させた実践編に移っていきましょう。

 

《第1章:初手》

 私がこの話をしていて、一番多く来る質問が「初手は何を考えて行動すればいいですか?」というものです。

 確かに、選択肢が全て解放された状態で、「自由に選んでいいよ」と言われれば、逆に悩みますよね。しかし、こういった悩みもしっかりと押さえるべきポイントを押さえて、論理的に選ぶ/選ばないを取捨選択していきましょう!

 

Step 1:トイレのパリティ(偶奇性)を知る

 偶奇性とは即ち「偶数か奇数か」ということです。いくつか例を挙げると、

f:id:hommes:20191203063946p:plain

 赤いマーク使用不可便器を指しています。

 このように単純に並んでいる便器の数が偶数のものを

  • カルテット(4つ並び)
  • セクステット(6つ並び)
  • オクテット(8つ並び)

 奇数のものを

  • トリオ(3つ並び)
  • クインテット(5つ並び)
  • セプテット(7つ並び)と考えます。

 キング*1は基本的に1便器として扱いますので、『クインテット+キング』はセプテット(5+1=6つ並び)とし、偶数列として考えます。

 しかし、ただし書きで紳士はキングを使わないものとする、と注釈が入れられていることが多いため利用には注意が必要です。

 これに対し、アニマ*2は外から見ても中から見ても便士に影響を与えないので、1つの柱(壁)という考え方をします。なので、『クインテット+アニマ』はクインテット(5つ並び+壁)と考えるため、奇数列になります。

 また、これらはトイレに入ってすぐに把握すべき情報です。あまり便器をじろじろ見たり、「いち…に…さん…」と数えていくのははしたないですから(そもそも人としてガイジ)練習して、一瞥するだけで何組かというのを把握できるようにしておきましょう。

 

Step 2:サイドを考える

f:id:hommes:20191203070757p:plain

 例えば、このような便図があったとき、あなたは紳士(隣に立たれたくない)と仮定します。

 すると

f:id:hommes:20191203071203p:plain

 この赤く印をつけたところでは、用を足せないですよね。

 また、相手も紳士だと仮定すると

f:id:hommes:20191203071615p:plain

 便器をひとつ選択するということは

f:id:hommes:20191203072112p:plain

 このように、3マス分相手の便器選択を牽制することになります。このStep 2の理論は今後の便器選択の中で基礎中の基礎ですので、ぜひ覚えておくようにしましょう。 

 

Step 3:コーナー(角)を考える

 Step 2では選択した便器とその周り二つ、計三つの便器を相手に牽制できることを学びました。

 しかし、一つ問題があります。周りの便器の選択に制限をかけるということはコーナー(角)にある便器を選択したとき一体どうなるのか。

f:id:hommes:20191203074035p:plain

 ここを選択すると

f:id:hommes:20191203074421p:plain

 このようにサイドにかける牽制便器が一つ無駄になってしまいました。先ほどのStep 2で相手が選べた便器は二つだけでしたが、角を取ることによって相手の選択肢が三つに増えてしまいました。

 なので、特殊なケースを除き角を選択する行為は相手に取られるサイドが減るので、守りとしては強固な布陣となりますが、攻めの姿勢としてはマイナスポイントです。紳士の間でも角便器を選択する行為はチキンとして挑発されてしまいます。

 もちろん、場合によって臨機応変に対応することが望ましいですが、初手の便器選択において選択肢に上がることはまず無いと考えましょう。

 

Step 4:“崩し”の概念

 さて、初手講座も最終ステップです。

 ここまでで

  1. 便器の偶奇を知ること
  2. 便器選択でサイドを牽制すること
  3. 角を取るのがもったいないこと、を学びました。

 そうなると頭の良い皆さんはそろそろ便器選択における理想型が見えてきませんか?

f:id:hommes:20191203080249p:plain

 このように奇数列は角を埋めることが理想型の前提となっていることがわかります。逆に言えば、端から数えて偶数の便器を選択すると、この理想型が崩壊することになります。

f:id:hommes:20191203080901p:plain

 偶数はどこから入っても、後の人次第で理想型を作れてしまうので、初手で理想型を崩すことはできません。しかしながら、このように理想型を考えていき、基本的に初手はこれらを崩すほうへ考えます。

 すると

f:id:hommes:20191203081811p:plain

 奇数列配置のときは、理想型を崩せる偶数便器。偶数列配置のときは、サイドを活用できる角以外の便器というのが初手選択における結論になります。

 実際のところ、初手は初手なので、自由に選択しても勝敗が揺らぐようなことは起きないのですが、論理的に選択するのであれば、これがスタンダードかと思います。

 ちなみに私は便所に入って誰もいないときは何も考えなくていい角から2番目を選びます。普段は入り口から一番遠い角から二番目ですが、急いでいるときは入り口に近い方を選びますね。

 

《第2章:棋譜を読む》

f:id:hommes:20191203214351p:plain

 これは僕の地元の中学の近くにある多目的トイレの棋譜です。

 今回は盤面(便所のステージのこと)を【セプテット5禁:クインテット】と表記しています。序章でも述べたように盤面把握は非常に大切です。

 まず棋譜の起こし方ですが、トイレの出入り口の進路方向に対して小便器が並行に並ぶもの、垂直に並ぶものなど様々な状況がありますが、本稿では入り口が左側にくるように回転します。

 そこで横から「1,2,3,4…」と、そして縦は「一、二、三、四…」と数えます。

 この場合、列は上からセプテット(7つ並び)クインテット(5つ並び)なので、この盤面は《セプテット:クインテット》となります。そして、上の段の右から3番目が使用禁止なので、これを「一5禁」と表記します。よって最終盤面は【セプテット5禁:クインテット】となります。一段目というのは書く順序で分かるので、省略いたしました。

 では、「一5禁」のように紳士の配置も棋譜のように表現してみましょう。はい、答えは「二4紳」ですね。本稿では分かりやすく説明しますが、このような表現に皆さんに慣れていただくため積極的に使っていこうと思います。

 

《第3章:スタンドアロン》 

f:id:hommes:20191203165415p:plain

 こちらは【オクテット46禁】の便図です。

 あることが見えてきませんか?「一5」の便器をよく見てください。ちょうどサイドが使用不可便器に囲まれています。

 他にも端から2番目が使用不可となり、その端が独立しているパターンなど、便器が他の数列から孤立している状態のことをスタンドアロンStand alone)」と呼びます。

 これは紳士からしたら美味しい話で、

f:id:hommes:20191203165613p:plain

 このように便器と便器の間に心理的な壁(柱)が立っているようなものですから、

f:id:hommes:20191203165833p:plain

 スタンドアロンはまるで個室の中で小便をする安心感に包まれるというわけです。

 ただ、ここは選択の競争率が高いことや紳士たるもの思考停止した安定を求めるのは恥であるとする考えもあるようで、議題に上がると必ず荒れる問題のひとつです。

 

【補足】デュオ

f:id:hommes:20191203170101p:plain

 同じように孤立している二つ組をデュオと呼びます。デュオはどちらか一方を取れば、サイドにもう1つ便器が来ますから、スタンドアロン同様紳士を牽制することができます。

 ただ、ベンジャミンやホモなどの脅威を考えるとスタンドアロンほどの安心感は得られません。常にそのリスクを頭の隅に入れて置きましょう。

 

《第4章:格落ち》

 紳士の間では、便士は便所に入った時点では「紳士」として扱います。先ほどのコマ紹介では位の高い高貴な存在です。

 しかし、サンクチュアリ(便所)での行動によって紳士からベンジャミンや暴君として扱いを変えられることがあります。これを『格落ち』といいます。

 例えば、 

f:id:hommes:20191203170434p:plain

【セプテット135埋】という便況(小便器の使用状況の略)があったとします。俗に言う詰み状態なのですが、ここでそのまま「一4愚」したとします。

f:id:hommes:20191203170601p:plain

 するとこの時点で自分は紳士達からベンジャミンとして扱われてしまいます。(ベンジャミンとは他人が小便している隣で小便をする愚者の位)

 なので、自機の緑色が変更され、

f:id:hommes:20191203170733p:plain

 格落ちしてしまいます。

 このパターンでは紳士からベンジャミンへの格落ちしてしまったので、紳士的権限の9割、人権の6割、全財産の4割を失ってしまいます。これでは事実上便器選択の負けということになります。

 このように格落ちというのは、非常に戦況を左右する要素なので、ルールをしっかりと覚えましょう。

 とは言っても、特に難しいことではなく、紳士的倫理観をなぞってさえいれば、まず間違えることはないので、日頃から人間性を養い、生きることを心がけることが肝要だといえます。

 他の例も一応紹介しておきます。

f:id:hommes:20191203171451p:plain

よく紳士界隈で話題に上がる

セクステット2紳ホ紳愚愚埋:オクテット1紳4愚紳愚愚愚埋;3人待ち,後1,糞2待機】の図ですね。

 このとき自機(紳士)は便意[大]が最大としたとき便意xは限りなく最大値となる。

 すると自機は

f:id:hommes:20191203172231p:plain

ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!

f:id:hommes:20191203172507p:plain

 このように紳士がデフォルトしたとき、デフォルト(ホワイトとも呼ぶ)はコマの中でも最低ランクなので、

f:id:hommes:20191203173224p:plain

 ジェントルから格落ちした場合、紳士的権限の全て、社会性の全て、人権の9割、衣服、賠償金を失う大損害となってしまいます。紳士的権限の全てを失うと便士としてのトイレ参加権を失うので、強制敗北となります。

 

 当たり前ですよね。トイレ以外でぶりぶりする人なんかトイレに来る意味無いですもん。

 

【発展】格落ちの二者択一

 このように、紳士的でない便器選択によって格落ちしてしまうことを学びました。そこから発展して、格落ちせざるを得なくなった状況からの最善択を学んでいきましょう。

  • シールドオブプライド戦法 

f:id:hommes:20191203203615p:plain

 典型的な詰みの形である【クインテット24紳埋】があります。このとき、1,3,5どれをとってもベンジャミンになってしまいますね。そこで1,5(角)ではなくあえて3を選択します。

 すると

f:id:hommes:20191203204333p:plain

f:id:hommes:20191203204505p:plain


 ズズズ……

 

f:id:hommes:20191203204552p:plain

 

 グググ……!

 

f:id:hommes:20191203204626p:plain

 

 ブワッッッ!!!!

 

 といったように「3愚成」ではなく、「3ホ成」でホモに格落ちすることができます。ただ注意点があって、この場合、サイドに便士が一人しかいない端「1,5」ではなくサイドに便士が二人がいる「3」でないとホモに格落ちできません。

 ベンジャミンと比べた場合の格落ちメニューは、紳士からホモに格落ち:紳士的権限の5割、市民権の7割、安心感の全て、プライドとなり、紳士からベンジャミンに格落ち:紳士的権限の9割、人権の6割、全財産の4割となるので、

 場合によっては、ホモに格落ちしたほうが得ということになります。また、サイドの紳士の小便を妨害できるのも、この戦法のメリットのひとつです。ですが、同性愛者であるということを偽るので、自身のプライドにダメージが与えられます。このことからシールドオブプライドと呼ばれます。

  • ブリイブリーデフォルト

f:id:hommes:20191203210543p:plain

【カルテット2紳+アニマトリオ紳紳ホ埋、ウンコ待ち】

 こちらもいわゆる詰み状態です。さらに条件として、便意[大]を最大としたときの棋譜を想定します。要するにうんこが漏れそうな状態で大便器が全部埋まっているという絶望的な状況です。

 このとき、中にいる便士がトイレ終了によって出てくることはないという前提で、便意x=lim[x→∞](便意が極限まで最大値をとる)としたときの行動を答えよ。という問題が近年頻繁に出題されています。(格落ちの応用力を見るため)

 行動を起こさなければ、デフォルト不可避という絶望的な状況。どうすれば良いのか。

f:id:hommes:20191203211724p:plain

 こうです。

 この場合、「4糞成」でデフォルトします。もし仮に、普通にぶりぶりしてしまった場合、問答無用でデフォルトに格落ちしてしまい、紳士的権限を全て剥奪されてしまいますが、小便器でぶりぶりする、あるいは便器に糞便を投げつけることで、デフォルトに格落ちするか、暴君に格落ちするかを選択する権利が与えられます。

  デフォルトの損害は、紳士的権限の全て、社会性の全て、人権の9割、衣服、賠償金

 これに対して暴君の損害は、

紳士的権限の9割、社会性の9割、賠償金、来月のおこづかい権

 ですから辛うじてトイレの参加権を失わずに済みます。ここからの挽回は大変難しいですが、それでも耐えることはできます。ひとつのテクニックとして覚えておきましょう。 

 

まとめ

 少し長くなってしまいましたが、以上で、一流の男の便器選択の解説を終えたいと思います。

 いかがだったでしょうか?確かに、恋愛工学やオンラインコラムで述べられているテクニックや知識も間違ってはいません。しかし、肝心の人間的魅力が不十分なら、それは全く意味のないものとなります。外装だけベンツでエンジンが軽自動車。そんな車あなたは欲しいと思いますか?欲しくないですよね。それと同じです。

 モテたければ、一流の女性と恋愛がしたければ、知識を得たり、テクニックを磨く前に、人として一流になるしかありません。そして、そのために必要なことはたったひとつだけ。

 それは、トイレで適切な便器選択を行うのを心がけること。これだけです。

 「本気で恋愛がしたい」「本気でモテたい」

 そう思っているそこのあなた。ぜひ今すぐに実践してみてください。きっとあなたの恋愛が、いや、あなたの人生が変わるはずです。

 

参考文献

www.vox.com

www.quora.com

www.thesun.co.uk

*1:障害者用小便器のことを指す。横の手すりが王座に似ているところがこの呼び名の由来である。

*2:個室大便器のことを指す。並ぶ便器を外界とし、それを隔てた個室空間を1つの生命に比喩するところから由来する。